2章 テキスト批評という練習法 要約
2.1 テキスト批評とは何か?
テキスト批評は、テキストを批判的に検討する能力を養うと同時に、テーマが自由なレポートや論文を書くためのよい準備や練習となります。
テキストの批判的読解を通して、自分なりのテーマと問題を提起して議論する仕方を学ぶ
2.2 なぜ本(テキスト)を読むのか?
著者の現実の捉え方をいったん理解したうえで、
- そのやり方 (プログラム) で、本当にうまく事態が理解できるのか (情報を整理できるか)、
- 問題が解決できるのか (期待されたアウトプットができるか)、
- 見落としてしまうものはないのか (読み込めない情報はないか)、
- 別の問題にはどのように対処するのか (汎用性があるか)
- など著者の主張をさまざまな問題や事例に適用しながら検討していくことこそが、問題意識やテーマ設定能力を養うことにつながります。
- テキスト批評ではこれを行います。
2.3 テキスト批評の仕方
- 2.3.1 テキストについて
- 2.3.2 全体の構成
- 2.3.3 各構成部分の作り方
(1) 目的の提示:
- (1-a) どんなテキストのコメントを行うのか、著作の一部であるならそれはどのような部分か、などを簡単に紹介し、
- (1-b) 論じてゆく内容の順序をやはりごく簡潔に紹介する。
(2) 要約:
順要約
- テキストの順を追って、原著者の主張を正確に把握し、 まとめる
- 各文段 (パラグラフ) を、ごくみじかく、 1-2 行程度の一文に要約しておく
- 文段の文章のうち、派生的なものを切り捨て、著者の主張が端的に表れたもっとも重要な一文を見つける
- 各文段に与えた 「一文要約」 をつなげて、全体の要約をつくります。
- 全体要約
- 全体をただ文章の順番に要約するのではなく、
- 著者の最終的な主張を理解した上で、
- どのような理由と根拠からその主張に至ったのか、
- 論理的な構造を分析しながら要約する
- 要約個所がテキスト上のどの部分に該当するのか、ページ数を丸カッコの中に入れてはっきりと示しておく
(3) 問題の提起:
- テキストを土台にしながらも、あくまで自分で問題を提起し、自分で解答を見つける
(3-a) テキストの中心的な主張のピックアップ:
- テキスト中で、 自分が関心を持った主張、 重要と思われる意見をピックアップします。
(3-b) 問題提起:
- テキストからピックアップした著者の主張について、疑問、是認、反論、ないし批判的検討を行います。
(4) 議論:
- 問題提起
- ピックアップした著者の主張を検討する
- 立論
- 根拠と証拠のある主張のこと
- 根拠は、自分の主張よりも一般性のある認められた主張のこと
- 議論で行うべきは、 立論の検討です。
- 著者の主張は、分析するならば、 前提、 証拠 (ないし事実)、推論から生まれてきます。
- 前提、証拠 (ないし事実)、 推論のそれぞれが検討可能な対象です
- どれをどのように検討したいのか提示
- 問題提起
- 問題の詳しい検討
- 議論
- 論理的かつ実証的に、その根拠や証拠を示す
- 検討によって、テキストの著者の主張について、自分の主張を展開してゆき、一定の結論へ至るように議論します。
(5) まとめ:
- これまでの全内容を手短にまとめます
- 著者の主張のピックアップからの流れを考慮しながら、自分のコメントを要約します。
2.4 テキスト批評の効果
この批評を平常くり返し行うことで、 テキストを批判的に検討することや、 卒業論文などのテーマ・ 問題を設定する際に役立つ
卒業論文のテーマに関係する著作や論文について、この批評を自分でしておくと、それ自体が卒論用のノートや準備メモとなります。